医療法人ウッドメッド会 森永上野 胃・腸・肛門科

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ジェネリックという名前の薬品に対する疑問点 (医療研究集会によせて)

2003.05.31

1.私は、開業して10年になりますが、その前約1年間ある診療所で副院長を務めさせて頂きました。
 7~8割がジェネリックでした。
 それから、当院を開院しております。
 まず、感じたことは、先発品の手応えでした。
 ジェネリックメーカーは、「同等の薬効で安価なお薬がある」と、最近盛んに新聞に一面広告を出しているようですが、はたして同等の薬効が得られているのでしょうか。

 添付のアダ○ートLとそのジェネリックの薬理試験結果をみても、どう見ても同等とは思えません。(保団連は同種同等と言う前提で、すべてを提案されているようです。メーカー提供の資料ではありますが・・)

 むしろ、近隣の医療機関で、「今までこんな薬を使っていたが、なかなか血圧が下がらない。先生の所で診てくれないか」との要望も多く(当院は胃腸科)、このジェネリック(失礼ですが、効かないので以下ゾロと言わせて下さい。)を見せられます。内心、勝負ありの感を抱きつつ処方。

 やはり、「私のこの15年間は何だったのでしょうか」と言う、おきまりの答えが患者さんから返ってきます。皮膚科の外用薬などは、なおさらそれを顕著に感じていますが、本当に同等の薬効と言われる根拠をお聞かせ頂きたいものです。

 (これは、一度一面広告を出したゾロメーカーにメールしましたが、福岡支店長が謝罪に来ただけで、根拠には応えてくれませんでした。)  

 我々の体は複雑です。ただでさえ拙い知識と診断学で診療し、何とか手応えを感じていることが多いのですが、これに薬のせいで治らないのではないかというバイアスまで作りたくはないとの気持ちを強く抱きます。



2.そもそも、このゾロメーカーとは、どんな形で出来てきたものなのでしょうか。
  最近の一面広告を見ていると、あたかも、自分たちは国民の皆様のために同等の薬効で、安価な薬の安定供給を続けてきたかの文面を連ね、これを使わぬ医療機関は、高い薬価で利幅のある、また患者さんに高い負担をかけているかのような印象を持たせておりますが、実情はそうでしょうか。

 高い薬価で有ることは事実ですが、利幅などないに等しいことは、医療機関なら、どこでも知っています。同等の薬効で安価なら、経営面からも飛びつきたい位です。しかし、先の印象(実践)はぬぐい去れず、きちっと治って欲しいという思いで、今に至っています。

 ゾロメーカーは、特許切れの売れ筋商品だけを作る、まさにハイエナのようなメーカーではないのでしょうか。昨今の企業モラル・環境に配慮した企業の評価などと言った風潮からも逆行する企業ではないのでしょうか。昨今のジェネリック推進に乗って、企業モラルが改善はされているでしょうが・・・・。

 また、諸外国におけるジェネリックと日本におけるそれは、同じものなのでしょうか。
 


3.メーカーのMRも年々、質の悪いものになっていますが、最近このゾロメーカーのMRもたまに訪問するようになりました。しかし、更に質の悪い印象を持ちます。教育程度から言っても、一流の仲間入りとは思えません。
  


4.国が、最近ゾロを奨励するかの点数改正をしていますが、これはゾロメーカーを認めたためでしょうか。
  最近の国の様々な政策を見ても、国民のためにと言った名目で如何に官僚のためである政策の多いことか。

 エイズも水俣病も、厚生労働省は今までどうやってきましたか。

 ゾロ推進は、決して患者さんの為ではなく、単に医療費を何とか下げたいという付け焼き刃的政策だけのことではないのでしょうか。患者さんのためなら、ゾロメーカーの存在するもっと早い時期から推進するべき事ではないでしょうか。

 ゾロも承認薬ではないかと言いますが、国の承認というのは、それだけでは信用しないようにしています。

 医療政策でも、国の誘導で、我々はどれだけひどい目にあっていますか。

 国の政策で言うなら、最近の川辺川ダム問題でもしかり。やっと利水訴訟は控訴を断念しましたが、官僚たちに都合のいい資料だけ提出した後は 面子だけでいまだ、強引に着工しようとしているではありませんか。


5.保団連が、大メーカー優遇に反発する気持ちは理解が出来ます。

  しかし、だからといってゾロメーカーを育成するかの運動には、私は理解できません。むしろ、改善されるべきは、先発メーカーへの天下りを止めさせ、諸外国に比し、低い医療費で頑張らされているにもかかわらず、その中で異常に高い薬価を下げさせることではないでしょうか。

 特許切れの薬も、今まで先発メーカーは利益を上げているわけですから、生産ラインも改造する必要もなく、ゾロメーカーに食われる位なら、ゾロ並に薬価を下げさせることでしょう。また、現在の不透明な認可や薬価の決定の仕組みを解明し、会員・国民に知らしめることでしょう。

 最近発表された先発メーカーの決算を見ても、他業種に比し、何と利益を出していることか。

 

6.かく言う私も、先発メーカーの薬のみを絶賛しているわけではありません。
 日本特有の新薬が承認されていることを知っています。日本のみで開発され、高い値の付いた新薬の70%が外国で承認されていません。米国で開発され他国で承認されていない薬は8%、ドイツで12%と日本では薬といえないものをたくさん飲まされているわけです。

 しかし、だからと言ってゾロメーカーを推進し、育成するのは筋違いのような気がします。また、我々もメーカーとのつき合いに自浄作用を働かせねばならないでしょう。

 

7.ある市営病院では、公立病院という正確でありながら、医局会で「そんなことを言っても、この現実の赤字の解消にはやむを得ないではないか」と院長に一蹴され、数年前よりゾロ薬品を大幅に採用するようになりました。私は、そんな所に務めなくて良かったと思いますが、税金も納めていない公的正確を有する医療機関が、内部努力もせずゾロ品を使うことで薬品費を抑えようとする。これで良いのかと考えています。
 患者様呼ばわりしても、患者様の事より、自分たちの為と言うか議会対策と言った考えでしょうか。

 

8.保団連も専門科集団の協力を得て客観的に運動を推進されているのだとは思いますが、その集団もバイアスはかかっていませんか。

 

9.今回の集会でこんな点が論議され、今後の国民のための医療への改善策になればと考えます。

参照:1.日医総研ワーキングペーパー
      「後発品(ジェネリック医薬品)についての基礎研究」

   2.月刊保団連
      「ジェネリック医薬品活用のために」