医療法人ウッドメッド会 森永上野 胃・腸・肛門科

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座談会「保険医協会とは」

2002.02.01

安藤:
そもそも都心の個人開業医にとって医師会でさえその存在意義は希薄であり、保険医協会となるとその存在さえ知らない、という方も多いように思います。この保険医協会とはどのような組織なのでしょうか。


森永:
熊本県保険医協会は、国民皆保険制度の下で第一線の医療を担当している開業保険医が中心となって組織した、任意で自主的な団体です。今年で25周年を迎え、会員数は3千名を超えています。また、全国では全ての都道府県に協会が設立され、その連合体である全国保険医団体連合会は9万6千名を超える会員を擁しています。


安藤:
一昨年からの東芝内視鏡問題(http://www2.nim.co.jp/)では、医師会ではなく保険医協会がバックアップして呉れたようですが、医師会と保険医協会とではその性格に違いがあるのでしょうか。


本田(孝):
医師会と比較するといろんな意味で対称的なところがあります。長崎県保険医協会の場合は非常に活発に活動していますし、保険改定の鋭明会でも保険医協会主催の説明会の方が内容もわかりやすいし出席も多いようです。医科と歯科の連携が密なのも特徴のひとつです。医師会に比べれば総予算も小さく、事務局の数も圧倒的に少ないのに、よくまあこの人数でこれだけの仕事量をこなしているものだと感心します。

私事ですが東芝内視鏡問題の時には、即座に内容をヒアリングして対応してくれたのは保険医協会の方でした。医師会にも状況は報告しましたが、やはり組織としては動きにくかったようです。


森永:
保険医協会は医師会に比べて野党的な存在だからでしょうか、私達の現場の意見に近いし、各方面に対しても結構、要求を出している姿が見えます。たとえば2年毎の医療費改定がありますが、その説明会は明らかに保険医協会の説明会が実践的で、冊子もより見やすく編集されています。これに比べて医師会の意見は、私達のような若手~中堅開業医の意見より御高齢の先生が経営している老健や老人病院の意見が色濃く反映しているような、旧態依然とした感じがします。たとえば保険審査についても様々な情報を持っている筈なのに、それが現場の私達に伝わってこないという印象があります。


安藤:
保険医協会は或る政党の政治色が強いと耳にしたことがありますが、この点はいかがでしょう。


森永:
フレキシブルで開放的だと思いますよ。左寄りだと言われていますが、少なくとも「選挙で誰それを押せ」等というような不快な押し付けは皆無ですね。ただ、全国版の保険医新聞はタイトルがややセンセーショナルに過ぎるように思います。一方、医師会の全国新聞は逆にトーンが低すぎて有益な部分が少ない気がします。

しかし、地域の医師会新聞である森都医報(市会報)や熊医会報(県会報)はよく書かれていると思っています。これは新聞に限らず組織においても、私は足して2で割ると丁度良いのにと思っています。慎重すぎる部分と積極的部分の姿勢ですね。


本田(孝):
森永先生のおっしゃるように、私も内側から見た印象では政党色などというものは殆ど感じません。伝統的に闘争という色彩が強いので、それが左寄りに見られる要因の一つではないでしょうか。


川内:
例の本田先生の件(東芝内視鏡事件)でも、結構積極的に動いてくれています。また、当院の事務が電話で保険請求の質問をしても、とても細かく丁寧に教えてくれるなど、或る政党の為に活動しているという印象はありません。いずれにしても、孤軍奮闘している現場の開業医としては、いざという時にバックアップしてくれる頼りになる組織であることが重要だと感じています。


本田(孝):
医師会が会員個人の問題にかかわるのは機構として難しいと思います。東芝と係争になった時、相手が大企業だっただけに個人として対峙するのは精神的にも非常な負担でした。保険医協会が組織としてバックアップしてくれた時には心底ほっとしましたし、ありがたかったです。


森永:
医師会は入会金も会費も市区医師会、都道府県医師会、日本医師会のそれぞれに徴収され、しかも相当の高額です。医業経営も切迫している昨今、それだけの対価に見合ったことを医師会も会員に対して行わないと、開業医の医師会離れは加速するものと思われます。医師会は地域の健康を守ることが第一義ではありますが、

会員にとっても役立つ医師会に脱皮する為には、現場の開業医により身近な業務に力を入れている保険医協会に対して見習うべきことは少なくないと思います。また、勤務医の入会も、もっと誰でもできるようにして、本当に医師の代表集団であるという姿も、今後の医師会には望まれるのではないでしょうか。あらゆる面で、対峙すると言ってはいけないのかもしれませんが、良い刺激役として保険医協会にも頑張って欲しいと思っています。


医療とコンピュータ Vol.13 No.2 2002.2月号より