医療法人ウッドメッド会 森永上野 胃・腸・肛門科

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開業医に求められる医療機能

2000.12.01

消化器外科の高度な専門医療とかかりつけ医(主治医)機能の両立をめざす~


A.患者さん本意の医療を実践するための開業

 早いもので、私の開業も5年を経過しようとしています。この5年間はあっと言う間の時間でした。大学での生活に行き詰まりを感じ、自分を生かす医療とは何かを考えてからも10年が経過しております。大学病院、公的病院での生活が長かったのですが、このような大規模病院では、図体が大きいだけで、患者さん本意の医療が実践しにくく、そして、今はやりの官僚的で、即応性がありません。また、給料に反映もしないので、それを誰も変えようとしません。自分一人が一所懸命でも、コ・メデイカルが動いてくれません。これらが、原動力となり、手段は、開業という形を取らざるを得ませんでしたが、高度医療とかかりつけ医をめざす医療の実践が始まりました。

B.消化器外科、内視鏡を中心とし、何でも相談に応じるフットワークの良さ

 当初は外来機能が、主だと考え特に消化器内視鏡、特に大腸ファイバーには絶対の自信がありましたので、これを中心とした医療を展開しました。特に、内視鏡を痛くないように挿入することはもちろんですが、全結腸を5分で挿入し、きつくないこと、検査後の納得のいく説明ももちろんですが、患者さんのプライバシーを考え、男女を別にした回復室等にも気を配っています。おかげで、現在では年間3000件以上の内視鏡を行うようになり、現在電子内視鏡2台がフル可動状態で、3台目を考慮しております。内視鏡的治療も、ほとんどの治療を当院で行っており、また学会発表ができるレベルを維持するべく努力しております。かかりつけ医として、話しやすい雰囲気や、いつでも急患に対応できる連絡体制もとっています。 当院では、人間ドックも実施していますが、これこそ「設備の整った病院で」と、盛んに学会なども推進しているようです。しかし、私達もその裏で働いていたわけですが、大病院こそ、ドックは医師にとって給料外、診療外の意識が強く、流れ作業的で、心のこもらないものになっている事が多いようです。当院では、アットホームなドックを心がけ、加えて、全結腸ファイバーの導入や、甲状腺エコーも標準に入れ、益々力を入れていく部門に成長しています。

C.全室個室の快適な療養環境の中での消化器手術

 旧市街に開業したために、周囲には公的な大病院もありますし、古くからの診療所も沢山あり、開業当初はかなり立ち上がりが遅い印象を持ちました。しかし、消化器を専門とし、なおかつ、かかりつけ医の機能を持つ有床診療所というものはそう多くは無いと考えていましたし、それに加え、まず、自分がかかりたい医療機関とは何かを考え、徹底的にサービス業に徹するという事を実践しました。また、いくつかの工夫をしているのですが、まず第Iに、診療時間です。
 診療時間に示しますように、日曜を半日診療しております。また、昼休みの12時から13時までを診療時間にいれ、また夜7時までの診療としております。患者さんが、かかりやすい時間をと考えたからでした。また、入院も全室個室です。電話、バス、トイレは標準装備、それにTV、冷蔵庫、ウオシュレットがさらにつく部屋をもうけています。もちろん冷暖房はいつでも入りますし、お隣の迷惑にならぬ範囲で、入浴も自由です。また、プライバシーを重んじ、軽症の方は、部屋にロックが懸けられるシテイーホテル並の施設を作りました。何より「病気をした時くらい気がねなくゆっくりしたい」と言うのが、患者さん達の本音だと考えたからです。また利用料金も、最高で3500円と、周囲の公的病院なら1万以上とられる部屋でしょう。全室個室は、男女の別を考えなくて良い上に、潜在的な隔離室にもなり便利です。そのため、当初は高くとられるのでははないかと敬遠されがちでしたが、次第に口コミが拡がり、退院させるのに苦労することが多くなりました。また、良い建築家に恵まれ{(株)環境計画092-526-0511}、外来、病棟共に、診療施設らしからぬ雰囲気とアメニテイーの良さを重視した事も効を奏しているようです。現在、外来一日平均100人前後、月12~3例の手術をこなし、平均在院日数10日前後になっています。 しかし、外科をやるからには、かならず末期患者さんも抱えることになるのですが、末期になったから、医療センターなどへ送る等と言うことはせず、その患者さんにとって、一番ベストの方法は何かをいつも考えています。それが、当院での加療であれば、当然在院日数は増えるのですが、末期を入院で抱えることもありますし、在宅で迎えられることもあります。逃げない医療、しかし、患者離れの良い医療を心がけています。 当然、私一人では手に終える状態ではなくなり、昨年4月より同門医局より、私の医療感に共鳴してくれる後輩を副院長として迎えることができるようになりました。結果的に、私の仕事量が楽になったことはもちろんですが、質の向上が図られただけでなく、いろんな面で、相談、学問的な向上心も生まれるようになりました。

D.病床数ではなく機能を基準に病院・診療所の区分を

 ベッド数は12床しかありません。これには、資金的な制約もあったことは事実ですが、それ以上に質の維持を図る上で、自分の目の届く範囲がこの程度だと最初から思っていたからです。5年前までは、療養環境等に点数化の考慮はなかったようですが、現在病院では点数化されるようになりました。診療所では、診療所I類をとれるようにはなりましたが、1ヶ月で、看護婦一人の給与にも満たない手当です。厚生省は、今回の改正で、有床診療所にも、療養型病床群として点数化を認めましたが、有床診療所こそ、フットワークの良い、かかりつけ機能も持ち、且つ急性期の医療も行える地域密着型の施設であることを把握していないとしか思えません。当院では、消化器内視鏡、内視鏡的治療、従来の手術、腹腔鏡下手術をこなしているために、現在の状態が維持できているものと考えております。このまま19床以下は診療所という制約をつけるのであれば、20床病院というのも考えなくてはならないのかも知れません。
 いや、むしろ、私は早く、現在の保険制度が崩れ、せいぜい基礎部分をまかなうのみとなり、自由診療制、ないしは、マネージドケアーへ移行した方が、国民のためになるのではないかと考えます。これ程までに、国家の威厳が低下し、猫の目のような一貫した政策もない状態で、今後益々、医療界の地殻変動が起こることは間違いないでしょう。米国での戦国時代を生き残ったメーヨークリニックでは、次のような点を「選ばれる病院」の条件としています。

1.的確な診断と効果的な治療で結果をだす。

2.全職員が患者さんに最大限の敬意を払う。

3.優れた医師を集め良質の医療提供を行う。

診療所とて、同じ事だと私は思っています。