いまこそ必要な医療現場からの発言 ~持続可能な医療体制のために~ (2)
2001.10.14
今の医療・介護は儲かるか ★コムスンの鳴り物入りでの参入 ★1,200箇所から300箇所への激減は、 ★では、歯を食いしばって地域介護を ★企業参入は患者のためか? |
企業が医療に参入したいと言いますが、昨年、コムスンが1,200箇所を確保しながら、3ヶ月後、半年後に、半分、4分の1と激減していきました。営利的な発想だけのビジネス感覚で言うと、日本の今の医療・介護は、儲かる部分と、儲からない部分が、はっきりあって、企業は、儲かる部分だけしか乗り出したくないのです。トータルで見るとやはり医療人が、一生懸命がんばっている部分が非常に広い。この1,200箇所で言うと、900箇所は、医療人が、がんばっているからこそ、その地域が何とかやっているわけです。
では、そういった地域介護を、がんばって守っている医療機関は、ただの馬鹿か。企業側から見れば経済的に馬鹿なのでしょう。しかし、先生方は胸を張って、私たちはがんばってやっているということを外に向かって言わなければなりません。
企業参入の意図は、患者さんのためではありません。金儲けしたい意志がはっきりしています。企業が言っている表向きの言葉に騙されてはいけないのです。
今、医療制度の中で大問題は ★日医総研http://www.jmari.med.or,jpワーキングペーパを 無料での会員登録が必要。資料の欄から閲覧 ★No.50 被用者保険の財務分析'99 ★No.51国民健康保険の財務分析 '99 ★責任を負うべきは保険システムの保険設計と経営 |
医療制度の中で、一番の問題は、無責任な医療保険制度を作って、それが今破綻しそうだということです。日医総研のワーキングペーパは、会員登録(無料)すれば、誰でも閲覧できます。前田由美子主任研究員が、No.50とNo.51で、被用者保険の財務分析'99年、国民健康保険の財務分析'99年を報告しています。その結果、保険を担当している人たちが、会計をきちんとやっていないことが分かったのです。それどころか、きちんとやっていると仮定して、幾つか分析すると、破綻すると言うよりは、まだ工夫が足りないことの方が大き過ぎます。この情報が厚生労働省に流れたのでしょうか、月給だけでなくて、ボーナスを含めた年収に保険料をかけることになりました。これだと10年程度は保険が完全に旨くいきます。一本化すれば、少なくとも10年、20年大丈夫だということが、はっきり分かっています。それを医療機関が悪いみたいに言われるのは不合理な話だと思います。
次に、国家戦略的な成長産業としての医療について説明します。
高齢社会 IT医療情報学 ロジスティクスとして Genome 分子生物学 三すくみ BECON physiome 医用生体工学 (中心に患者とその家族)
医療資源の最適配置 データマイニング CTI 携帯電話 CATV 医療技術評価 医療官理学 インターネット オーダリングシステム 情報開示要求 EBM 電子カルテ 音声入力 カルテ開示 介護保険 遠隔診療 健康診断 バーチャル手術 臓器移植 救急医療 美容整形 形成外科 患者の満足度 QOL 支援創薬技術 感染症サーベイランス 細菌学 ウイルス学 生理学 生理機能検査 画像診断 コンピュータ 外科 低侵襲手術 整形外科 リハビリテーション 内科 在宅医療 テイラードメディシン マイクロマシン 自動モニタリング 人工臓器 有機化学 生化学 免疫学 HIV 薬学 服薬指導 東洋医学 漢方 医師 看護婦 コメディカル 介護者不足 介護ロボット 介護機器 DDS 遺伝子診断 ヒトゲノム解析 遺伝子治療 プリオン 検体検査 生体材料 バイオセンサー |
右肩下がりの高齢社会を、何が支えるかというと、もともと患者さんのご家族と私たち医療者が支えるわけですが、3本の技術分野で見れば、従来からの内科的、薬学的な技術の発展であり、ドラッグ・デリバリー、免疫学、分子生物学、あるいはゲノムの技術。
もう一つは、整形外科、外科、脳外科の手術、つまり大きなマクロの手術から発展した技術で、人間の体をメカニカルに、あるいはエンジニアリングに特化して治療をする医用生体工学が支える分野。これには、介護ロボットという発想、リハビリテーションの機械なども入ります。マイクロマシンというジャンルも出てきます。
この20年来、新しい3本目の柱として出てきたのが、ロジスティクスとしての医療情報学です。この認識は、医療情報学の関係者自身が、よく持っていないのですが、医療情報学の本質は、ロジスティクスなのです。ロジスティクスは、物流とか流通と訳されています。もともとは、戦場における兵站学なのです。今はテロに対する攻撃という物騒な時期ですが、実際に病気は、いつ何時、どういう形で発生するか分かりません。事故もそうです。それに対して、医療者は、必ず、間髪を入れず、最善を尽くさなければなりません。ですから病気の発生は、戦闘行為と非常によく似てます。思いも寄らぬ病気に対して戦う。これは医療関係者の義務ですが、こういった行為は、戦場で攻撃された兵士が戦うのと同じです。ただ、戦闘行為以外の全て、物流とか情報とかもひっくるめてロジスティクス、兵站学と言います。これが実際に、医療情報学の進むべき道です。言葉を換えると患者さん、ご家族、医者、看護婦、検査技師、あるいは薬剤師、そういう全ての医療リソースを、リアルタイムに、最適に配置して、同じ医療リソースを最適に使うというのが、医療情報学の本質です。これが3本目の柱です。ですから、今、世間は、IT、ITと、分かった人も、分からない人も、口をそろえて言うわけです。
米国の産業戦略の大成功 ★医療を支える先端技術の3本柱のうち、 ゲノムとITにおいては、アメリカは ★これが今のアメリカの国力の大きな ★アメリカのプレゼンスは、軍事力とともに、 |
前記の3本柱を見ると、アメリカの戦略が非常に強かだと言うことが分かります。この3本全体を押さえ込もうと実に旨くやっています。3本柱のうちゲノムとITは、承知の通り、アメリカが世界制覇を完了しました。フランスはゲノムの分野で、アメリカに取られてはいけないと必死になって戦いましたが、結果は、痛み分けか、アメリカが一枚上で勝ちをおさめた感じがします。
ITは、完全にアメリカの一人勝ちです。これは政府がITを発展させたからなのです。結局、ITがアメリカ国力の大きな源泉になっています。アメリカの国力は、経済力と軍事力に支えられているとお思いかも分かりませんが、経済力も軍事力も、その根底に、ゲノムやITを発展させたからこそ維持されているわけです。ピンポイント爆撃という言葉で言われるように、アメリカは、IT産業を十分に成熟させました。また、一方、ゲノムで医療を発展させているので、金さえ出せば、アメリカの医療は良い。「金さえ出せば」の枕詞をアメリカの医療から抜いたら、全くおかしいことになります。日本の普通の人と同じくらいの財産しかなければ、アメリカの医療を受けた患者さんはボロボロです。
とにかく、アメリカのプレゼンスは、軍事力とともに、これらの戦略産業でも力を発揮しているからこそ、非常に強いのです。
戦略産業としての医療 ★1997年2月、NIHは健康医療における医用 ★政府関係者や、NIHの上級管理職の中から ★米国は、医療の3本柱すべてを押さえる |
3本柱のうち、医用生体工学で、アメリカは新しいBECONという言葉を作りました。NIHは、1997年、健康医療における医用生体工学技術は、21世紀の一番大事な柱だと言うことで、戦略的に、政府と民間と学会が結託してBECONというconsortium(連合)を作りました。そして、医療の3本柱全てを世界に先駆けて押さえる計画を4年も前から始めていたのです。今年、アメリカの心臓病学会、第50回総会に、着任早々のブッシュ大統領が祝辞を述べに駆けつけました。アメリカは、これほど医療に力を入れているのです。ところが、小泉首相は医療費総枠抑制を強く言っています。
つまり日本はアメリカの戦略的産業政策と全く逆なことをしているのです。
他産業なら祝福されるのになぜ? ★どんな産業も30兆円規模が10年で46兆円に ★しかし、もっとも生活に密着した医療のみに ★IT/ゲノム/ナノテク/材料 みな医療セクタ ★効率性の低い部門から効率性や社会的ニーズの |
医療以外の他の産業では、30兆円が10年で46兆円になるとか、15年で60兆円になると予想されると、すばらしいといって、大いに喜ばれるのですが、医療は駄目なのです。医療だけが膨れあがる、日本を潰すという意識をマスコミによって植え付けています。これは非常に歪んだ形です。実際に、IT、ゲノム、ナノテク、材料という、これから発展させなければならない産業、その実需のフィールドは、皆、医療なのです。例えば、インターネットに流れている情報の半分は、医療や健康に関するものです。ゲノムで新しい遺伝子治療とか、新しい創薬ができたとしても、医療費を増やしたくないので、ゲノムによってできた薬は使うなと言われたら、ゲノム産業が伸びるでしょうか。伸びるわけがないですね。ナノテクノロジー、材料などの研究開発をしている現場のスタッフは、皆、医療セクターに使いたいと必死になってがんばっているに、この医療セクターが伸びなかったら、日本のナノテク産業は伸びる道理がありません。そこの単純な仕組みが分かっていないのです。私は、IT、ゲノム、ナノテクは実感として皆分かります。というのは、医療情報部の教授として、ダークファイバーと呼ばれるような情報のネットワーク、あらゆる所から線を引いてくれ、引いてくれと、予算化され押しつけられるようにして引くのですが、その次の時には、中のコンテンツがない、ない、ないと必ず言ってくるのです。その繰り返しです。ゲノムもそうです。新しいアイデアはないですか、ニーズはないですかと、一生懸命、来て言うのですが、それでは、医療費の中に入れなければと言うと、皆、黙ってしまう、皆というか、政府関係者や経済界の一部の人は、黙り込んでしまうのです。
マイクロマシーンも、私、研究していましたので、よく分かるのですが、ナノテクノロジーは、医療に特化させてやらないと、絶対に発展しないのです。医療セクターで増やすべきことを、潰してはいけません。実際、経済財政諮問会議の骨太の方針には、良いことが書いてあるのです。効率性の低い部門から効率性を高めて、社会的ニーズの高い成長部門へと、人と資源を移動しろとあります。そうすると、日本の場合、答えは簡単です。特殊法人を潰せ。公共投資を止めろ。そして、医療福祉に是非、その資源を移動すべきなのです。単純に見えているのが、どうして旨くいかないのでしょうか。やはり政府の無策・無能としか言いようはありません。
なぜ新規産業が日本に育たない? ★産業振興策は数多く、世界に類を見ないほど ★知的ビジネスの研究者、医療関係者がやる気 ★新傾斜生産方式を医療・福祉・介護へ ★医療費の総額抑制は、本末転倒の愚策 |
新規産業を育成する産業振興策は山ほどあるのです。何十億円というファンド、何百億円というファンドが、日本には沢山あります。そのファンドの担当者は、どうしているか。受け皿がないと言って、一生懸命、国や地方に押しつけているのです。受け皿がないと言って、国や地方自治体を雁字搦めにして、予算を執行させるので、実需に伴う仕事になっていきません。例えば、日亜化学工業の中村修二さんが、日本を飛び出してアメリカに行き、元の会社を訴えましたが、サービス産業である知的ビジネスの研究者や医療関係者が、やる気を出せないルールとシステムを日本で作ってしまっています。一生懸命、努力している医療人が、夢と希望を持てない社会を作っているのです。骨太の方針の中には、しっかり、その逆のことが書いてあります。努力した人が、夢と希望を持てる社会にと言っているのに、各論では、過酷な医学部の入学試験をクリアし、国家試験に通り、安給料の研修医を連綿と一生懸命勤め、やっと一人前になった医師が、絶望的な気持ちになる社会を作ろうとしています。読売新聞でさえも本年4月28日、日本再生5つの提言のひとつに新傾斜生産方式を医療・福祉・介護へ。つまり、第二次世界大戦後に、日本政府が、重工業を超大産業としてやったように、今は、医療・福祉・介護に国費を投入しなければ駄目だと言っているのですが、そのあと、フォローの記事が全然ありません。医療費の総枠抑制は、本末転倒だということを、先生方は肝に銘じてください。それでないと、ついつい、俺たちは悪いことをしているのかと、俯き加減の、発想のない話になってしまいます。一番、成長するはずの産業の伸び率を、GDPの伸び率以下に抑えるというのは矛盾しています。経済政策としては最悪です。
ここで、景気回復、経済改革の起爆剤に医療がなるということに触れてみたいと思います。
今、国民がもっとも望む景気回復 ★日本人は老後の不安で貯蓄性向が強いのは衆知 ★セーフティネットたる医療への税投入1兆円なら、 ★安心により、GDPの6割を占める個人消費をさらに |
今、国民がもっとも望む景気回復は、医療を進行させ、消費を増やすことです。日本人は老後の不安のために貯蓄性向が非常に強いのです。1,400兆円が、老後のための貯蓄になっています。経済界の中にも分かった人が、おられます。樋口さんが、言っているように、日本人の場合、消費性向は69%、収入のうち7割を、やっと消費に使い、残りの3割は貯金しているのです。これに対して、アメリカでは、収入の9割以上が、消費に使われます。この2割の差ですが、日本のGDP(アメリカのGDPは日本の2倍)の4倍を、アメリカは、どんどん消費しています。アメリカが嚔をすると日本が風邪を引くのは当然で、日本の消費性向を変えなくてはなりません。では、どうすればいいか。つまり老後の不安、健康への不安さえなくなれば、まだ働けるという安全性が上位のレベルに保たれます。
セーフティネットである医療に、1兆円の税金が追加されると、生産波及効果を含めて、日本のGDPに対し6.6兆円寄与することになります。しかも、雇用は73万人増えます。今、政府が、今後5年間で530万人の雇用創出をしようとして、旨くいかずに苦しんでいます。医療に6から7兆円持ってくれば、こんな雇用創出はすぐできるのですが、この単純な計算ができない。
安心により、個人消費が、アメリカには及ばなくても、仮に2割増えると、100兆円(日本のGDP500兆円のうちの2割)の真水が消費に回るわけですから、あっという間に景気が良くなります。しかも、そのスピードですが、3ヶ月後、半年後には、景気回復効果が現れてきます。ここで比較したいのが公共投資です。公共投資によって、景気を回復させようとすると、まず、政府が法的な整備をして、予算を立て、それを執行し検収する。その間、予算を立てるだけで1年間、執行するために1年間、検収云々するとなると、更なる年月が必要になり、結局、公共投資への予算執行型では、2、3年余分にかかってしまいます。ですから医療へ投資する方が、ずっと早いのです。
医療・福祉への投資で雇用確保 ★医療・福祉の現場では、医師・看護婦も含め、 ★「ミスマッチ解消緊急雇用対策」 消化不良 ★ここに一定のトレーニングを受けた失業者を |
雇用確保については、先述したように数兆円で530万人の雇用確保が迅速にできるわけですが、これは実需があるのか。先生方の職場を考えればすぐ分かります。先生方の職場で人間は余っておりませんね。中には、余っているように感じている方が、おられるかも知れませんが、今後、職員(医師・看護婦を含めて)、あるいはITに対して十分な保険点数がつけば、今まで全然足りなかったのだなあと、改めてお感じなると思います。医療現場では、あらゆる技術レベルの人が不足しています。救急医療、小児科、あるいは産婦人科の先生方などの不足については、一般の人もよく知っています。
厚労省は、ミスマッチ解消緊急雇用対策を出していますが、全然旨くいっておりません。医療のところで、やらないからなのです。
ここに一定のトレーニングを受けた失業者を、パート吸収するだけで大きな社会的意義があります。
530万人の玉突き雇用創成(私案) ★建設作業員等の医療現場への直接の受け入れは、技術・ ★他のサービス産業等に従事している医療有資格者の ★その空席に、さらに周辺産業から雇用し、玉突き方式で ★玉突き雇用創成のためには、まず医療現場に不足する |
雇用を増やすやり方は、いろいろあると思いますが、私は、1例として、530万人の玉突き雇用を考えています。建設作業員を医療現場に直接連れてくるというのは無理です。
まず最初に、他のサービス産業に従事している医療有資格者、つまり、医者、看護婦等を医療現場に復帰させ、十分、快適に働けるよう、保険点数なり、幾つかの施策をしてもらう。例えば、毎年1.5兆円程度を100万人の医療人に支給すると、人頭割にして一人150万円、今より収入を増やす程度で、100万人が医療の方へまず戻ってくるという仕組みを作るわけです。
医療に戻ってきた場合、他のサービス産業に従事しているポストが空きます。かくして玉突き状態が起こり、各段階で次々と空席ができます。そうすれば建設作業員の方々にも、もう少しスキルの要る仕事をしていただけるようになります。この話をしたあとで、ある銀座の有力な先生から、「いやいや、建設作業員は、そのまま使えるよ。現場のヘルパーや看護婦さん、あるいは医者のいうことを忠実に守って、患者さんを抱いたまま移動するとか、何か力仕事をしてもらう。これだけでも随分、医療現場は助かる。」と言われまして、玉突き以外のルートもあるのだなと感じました。玉突き的に、あるいは直接的に、530万人の雇用を医療福祉の現場に持ってくるだけで、患者さんも、介護される方も、また雇用される側も、皆、ハッピーになります。こういうシナリオを、どうして政府が書かないのか、大変不思議です。国会議員の方々に提案はしているのですが、現時点では、まだ表に出てきていません。
規制改革に先行するセコムの動向 ★セコム、医療事業には20年以上前から関心「幼児が病院 ★電子カルテ参入、亀田総合病院関連企業とセコムのDB ★「自由診療保険メディコム」公的保険の支払い基準より ★遠隔画像診断サービス拡充 日経'01.7.17 ★セコム社長談、医療介護や損保など様々なサービスを提供 |
次に、セコムの動向を見てみます。セコムの飯田亮取締役最高顧問は、医療事業に20年以上前から関心がある。その理由は、幼児が病院を盥回されて死亡した事件で、これはいかん。わしがやる。ここに論理の飛躍があるのです。小児科医でもないのに、わしがやるとは、医師免許なしで何とかさせろということでしょうか。彼が、今、何か小児科の方で、すばらしい仕事を陰ながらやっているのかと言えば、全然していません。儲かる所とか、利潤が良いところばかりを狙っています。例えば、在宅医療ですが、彼は、そこで何でもやろうとしているのではありません。高額部分にだけ限ってやっています。
電子カルテ参入についてですが、実を言うと亀田総合病院は経営がボロボロで大変なところなのです。ここのノウハウを電子カルテで取って、セコムのデータベースセンターに蓄積し、医療をハンドリングするのだと言っています。
このあいだ、自由診療保険メディコムを発表しましたが、これが、また、きれい事なのです。公的保険の支払い基準より50%沢山払いますよと言って、外科医の先生方に甘い顔をするのです。ところが一方、45日間の入院期間に限る。少し、これからルールを変えていくかも知れませんが、入院が45日を越えると、あとは、公的保険か、自費で支払わないといけません。彼らの書いているシナリオを試算すると、日本の医療費は、減ったりしないのです。むしろ、彼らの言うとおり、2分の1の癌患者さんが入院したとすれば、何兆円かの現金がメディコムの方へ入って、ウハウハの状態になります。医療費は、30数兆円に、すぐ膨れあがってしまいます。そして、患者さんは、45日越えの入院費に大変苦しむことになります。
遠隔画像診断サービスも拡充して、いろいろ医療の中で、何かできないかと言っています。つまり、今後、医療事業が非常に伸びることを経営者として分かっているわけで、ここはさすがです。ただ、分かっていて儲けたいから、医療や介護保険に入りたい。はっきり、IR(Investor Relation:投資家向け情報)という投資家に対する説明がありました。セコムの杉町壽孝社長は、医療介護や損保など、様々なサービスを提供する社会システム産業へ変わると投資家に言っているのです。だから、医療の中に、無免許でも、何でも良いから、とにかく入りたいと言うのが、セコムの本質的な態度です。
★近年、医療機関の経営トップを医師にしか認めない ★根拠は「医師は経営のプロではない」、 ★セーフティネットたる医療機関経営には、「医療と経営」 ★「経営」のみでの医療機関経営は、利益追求の舵取り |
よく、先生方が言われて俯いてしてまう、「医師は、経営のプロでないから、経営はできない。」というレトリックがあります。あれもまた大嘘なのです。先生方は、しっかり自信を持っていただきたいのです。「医師は医療のプロで、経営のプロではないから、経営は企業人(経営のプロ)にまかせなさい。」と企業側は言います。そのとき、こちらも「企業人は医療のプロでないのだから、医療に入ってくるな。」と切り返せばいいのですが、それを先生方は、なかなか言われないのです。専門家は専門以外は無能という勘違いのレトリックを意識的に使っているわけですが、冷静に考えてみると、企業人は、例えばセコムでも、オリックスでも、経営をどうやって学んだかというと、実際に企業に入って、あるいは企業を起こして、自分の体験で経営術を体得しているのです。これは開業している先生方や病院の経営を任された先生方が、経営にタッチしてから経営術を体得していることと全く一緒なのです。つまり「経営は経営のプロに」と言うのであれば、医療人は「私も経営をしているし、医療も、プロだ。」と切り返せばいいのです。そうすれば、民間の経営者は何も言うことがなくなります。あとは、言葉の強さだけです。どうぞ、先生方は、「私は、経営のプロ、であると同時に、医療のプロである。」と胸を張って言ってください。それ以上、追求できる企業人はないはずです。もし仮にあるとすれば、「私は、MBA(Master of Business Administration:経営学修士号)を持っていますが、経営学部を出ました。」とか言いますが、経済学部を出て、経営ができるなどと思っている人がいたら、それこそ、世間の笑いものになります。
一方、医学だけは、苛烈な医学部への入学試験を経て、国家試験に合格し、長い研修医を終えて、やっと一人前の医療人になるわけですから、医学こそは、本当にプロ中のプロなのです。本当にプロであればあるほど、骨身に染みついていますから、先生方は、ご自分の値打ちが、お分かりにならないのかも分かりません。
では、どういうときに株式会社、あるいは企業の発想が、医療において許されるのか。これははっきりしています。儲けとして治療行為を考えよう。つまり、セーフティネットとしての医療ではありません。医療と金儲けだけを考え、医者は単純なリソースの一つ、将棋の駒という考え方、これを日本人全体が納得するのであれば許されます。しかし、これは恐ろしいシナリオで、当然、貧乏人は飢えて死ねと同じで、貧しい人は、医療にかかわれなくなります。命に差が付くことを日本人が望むか、どうかです。日本の国、あるいは政府に、コストの余裕がなく、汲々とした状態であればともかくも、日本は十分な余裕があるのに、こういうことを言うのはいかがなものかと思います。
「経営」のみでの医療機関経営は、利益追求の舵取りしか実際にできません。そこで、経営陣たちが、経営と診療を別にするのは困ると言わなければならないのに、資本と診療現場は別と言うのであれば、これは戦うしかありません。
さて、医療人は、今後どうしていくかが、最後の項目ですが、とにかく、この実態を国民に言っていかなければなりません。
医療への国民のニーズ そのためには総合規制改革委員会の主張する |
診療の都度、パンフレットでも何でも結構です。「私たちは、こんな日本のすばらしいシステムを作って、その一翼を担っているのだから、皆さん、誤解しないでください。総合規制改革会議の言っているような医療改革は、国民をそもそも欺瞞しています。」と言い続けなければいけません。
国民の医療へのニーズは、「安心して医療を受けたい。」と言うことです。これは、私たちも、素朴に、把握しておく必要があります。
国民のニーズとして、医者に親切にしてもらいたい。医者と話がしたい。忙しいときには、なかなかできないことも多いですが、比較的診療の空いている時間に予約して、たっぷり診察してあげる、話を聞いてあげることも必要でしょう。早く入院をさせてくれと頼まれても、すぐ入院できないことがあります。その時は、今、何人待っていて、その中に、どういう疾患の方がおられるかを透明化して、患者さんに納得のいくように説明してあげる。また、退院していただかねばならないときもあります。その場合、実状を縷々ご説明するしかないと思います。
一部負担金の増えるのはいやだ。救急医療を整備してくれ。保険適応を充実してくれ。これらは国民が望んでいることだと、マスコミや政府へ、患者さんと、私たち医療人は共に訴えていきたいと、診療の現場で、先生方が、患者さんに是非説明してあげてください。
今、求められるAccountability ★真の姿を国民全体に周知する義務 ★広報・情報部門が協力して活動を ★地域医師会からも最大の要請の柱 ★広報・情報はパワーの源泉 ★日医総研のWP、報告書、セミナ等の活用 |
そういう行為を一言でまとめると、Accountabilityに集約されます。真の日本医療の姿を、国民全体に周知する義務、これをアカウンタビリティ(説明責任)と言いますが、とにかく患者さんに教えてさしあげる。倦まず弛まず教えてさしあげる。今までは、患者さんに教えると言うことが許されなかったのです。厚労省が、医師の広告規制をしていたからです医者には素直な人が多いので厚労省や県が言ったりするとハイと答えて、言われたことの120%をやってしまう。つまり自己規制しすぎなのです。それが結果的に誤解だらけの魔物のような医師像を作ってしまっています。ぜひ、この誤解を拭わなければいけません。岡山県医師会、あるいは日本医師会の広報、情報部門、そして現場の先生方が協力して活動し、真の日本の医療を常に広めていく努力をしなければならない。先生方の中には、古き良き時代の「良い仕事をしていれば、そのうち分かってくれるよ。」というふうに考えておられる方がいらっしゃるかも知れませんが、そういう時代は、もう終わりました。10年か10数年前に終わりました。いくら良い仕事をしても、切り捨てられてしまいます。地域の医師会から、政府、県、市に、常に意見を上げていく。プッシュし続ける。有り体に言えば政治活動をしていくことが必要でないかと思います。今からは、金ではありません。広報と情報がパワーなのです。そのために、日医総研のワーキング・ペーパー、報告書などを是非活用していただきたい。私たちサービス提供側は、アカウンタビリティを発揮して、医療に関わる改善すべき点を、患者さんに申し上げるとともに、自己責任において啓発活動をしていく必要があります。また、厚労省には、常に強く言っていかなければいけません。厚労省を放っておくと、甘い甘い方向に行ってしまいます。
-マクロの成功からミクロの犠牲の回復へ- ★医療関係者にも人権はあるはずだ ★景気回復と構造改革を両立できる政策 ★戦略的成長産業としての医療への投資を |
最後ですが、マクロの大成功は、私たち医療人、つまりミクロの犠牲が支えているのだということです。医療関係者にも人権はあるし、発言しないといけません。
景気回復と構造改革を両立できるは、セーフティネットである医療、これが唯一最大のものです。
今後、日本が世界から尊敬を受けるには、日本へ行けば、すばらしい医療が受けられるし、日本の医療人は、世界中で活躍している。そして、産業としても、すばらしいと言わしめることです。更に、その医療を世界に発展していかせるのが、日本のプレゼンスを確保できる真の戦略産業であると思います。ただし、アメリカに倣うことが一つだけあります。DRG/PPSのように、保険者団体の力が強すぎるという異常なことではなくて、医療へ投資するぞと言う、あの大統領の姿勢。そして民間企業や政府の決意です。