医療法人ウッドメッド会 森永上野 胃・腸・肛門科

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【山登り】日本百名山 ブームが荒らすもの

2002.01.01

 この夏、日本百名山で見たもの-白馬岳山頂で方位盤を独占するグループ。放し飼いの犬と丹沢山に登る人。至仏山ではハイマツの上に荷物。くわえたばこで歩く人もいた。山は礼儀と非日常の場なのに。

 百名山は山を愛した作家・深田久弥が選び、64年に本にした。彼は生涯「非流行」の山を求め、百名山を特別視する気などなかった。山を人間と見なして対話し自らを深めたその精神とは裏腹に、ブームは独り歩きする。ブランド志向と相まって完登の達成感が求められ、満願の山頂に記念プレートを奉納する巡礼者もいる。

 97年にはニュージーランド人が78日間で完登し、1週間後に日本人が76日間で抜いた。百で足りなければ二百名山に三百名山、九州百名山・山梨百名山などの地域版、世界百名山だってある。

 深田が嫌ったツアーも山と結びついた。登頂証明書を発行する業者のパンフには「百枚集めるまで頑張りましょう」。登山はスタンプラリーか。

 ブームを加速したNHK番組「深田久弥の日本百名山」は美しいが、影は映さない。例えば一極集中による山の過剰利用。丹沢山塊の大倉尾根は道の周囲が踏み荒らされて痛々しい。し尿処理や高山植物の荒廃も各地で深刻だ。百の頂は現代社会の縮図でもある。

 品格・歴史・個性を基準に深田は百名山を選んだ。思えばどれも私たちが失いかけたものばかり。この夏、本紙群馬版に載った川柳がある。

             「裏山に百名山にない思い」 (白石 明彦)