病気と健康の話
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【病気の話】良質の医療とは何か?
2014.01.26
伊佐 二久
「良質の医療とは高度先進医療である」と、医療関係者も患者側も誤解している向きがないでもない。もしそうなら診療所はみな良質でないことになってしまう。私は病院、診療所それぞれの役割に応じて、患者を中心とした最善の医療-治療より広い意味、カウンセリング、患者紹介、フォローアップ、精神的リハビリ等を含む-を行うことが良質の医療であると解釈している。
最新の医療機器を備えた大病院でも良質でないところがあり、一診療所でも真の良質医療を誇り得るところもある。例えば長い間頭痛に悩む人が高度の検査を受け、「まったく正常です」と言われても症状は変わらず、マッサージやハリを試みたら、うそのように治った、という話は時々耳にする。
最新の精密検査がこれまで不可能であった難病の診断に革命的な威力を発揮しているのはもちろんであるが、順序を間違えると笑い話になりかねない。医師は患者と十分に話し合い、原因を探究し、必要なアドバイスを行い、ある場合は精密検査をすすめ、ある場合は専門医を紹介する。患者離れのよい医者は信頼できるともいわれるくらいである。
患者の訴えを親身になって聞くだけでも気持ちがほぐれ、症状が軽快することも少なくない。そこに総合医―ゼネラルフィジシャン―の存在価値がある。専門医はある特定の臓器に関しては深く研究し、優れた技術を持っているが、時として患者の全体像を把握していないことがある。総合医は専門医のような華やかさがないため、若い医師はほとんど専門医志向である。
しかし患者と医師が人間対人間の信頼感で結ばれる総合医もまた理想の医師像であり、これもある意味でのスペシャリストというべきであろう。最近、大学病院でも振り分け外来を設けているところもあり、総合臨床医学の講座を持つ大学もある。
専門医も総合医も、患者と精神的結び付きを保ちながら、それぞれの役割に応じ、協力して良質の医療を提供していくよう努力したいものである。
(国保河浦町立病院長)
熊本日日新聞 意見 異見より